2013/08/18 (Last Update: 2019/07/30) 編集履歴
ねぶたは北高行灯のすごいバージョンなので、過去の行灯だけではなくねぶたも参考にするとよいでしょう。
ねぶたやねぷたもいろいろあります。代表的なものは、青森のねぶた、弘前のねぷた、五所川原の立佞武多、黒石の黒石ねぷたなどでしょうか。
ここでは単にねぶたと言ったときには青森ねぶたについて指すことにします。
北高行灯とねぶたでは、規格・作業期間・作り方などの点で大きな違いがあります。
ねぶたは高さ3m(台車の高さを入れると5m)、幅9m、奥行き7mです。北高行灯の高さ2.5m、幅4.5m、奥行き1.8mと比べると、高さは1.2倍、幅は2倍、奥行きは約4倍となっています。見送りとよばれる後ろ側のねぶたを除いても、行灯と比べると奥行きが大きくなっています。見送りのねぶたが北高行灯と規格が近いかもしれません。
(記事を書いた当初、ねぶた本体の高さを5mとして高さ2倍としていました。これは誤りです。申し訳ありませんでした。)
ねぶたの作り方についてはこちらの弘前大学ねぶた・ねぷた研究会の「ねぶた教材テキスト 侫武多をまなぶ.pdf」という資料が非常によくまとまっています。これ以上の資料は見たことがありません。おすすめです。
こちらもおすすめです。陸奥新報連載2【人形ねぷたの技と力】必殺ねぷた人棟梁,中川俊一
まず大きな違いは、色塗りでしょう。
北高では事前に色を塗ってから紙を貼ることが多いですが、ねぶたでは真っ白な紙を全面に張ってから、筆や刷毛、エアブラシ(スプレーガン?)を使って色を塗ります。肌など、単色かつ微妙な凹凸を表現したいところはエアブラシを使っているようです。
インクについて、水性顔料と染料を使っているようです(詳しい商品名などについては調査中)。水性顔料はポスターカラーなど、北高でも以前よく使われていたものです (昔の北高行灯ではポスターカラーも使われていました (51stの行灯の作り方) が、最近ではガッシュ系が一般的なようです) が、染料については予算のこともありまったく使われていないと思います。顔料は水と混ぜたとき水に溶けず細かい粒の状態になりますが、染料は水に溶けます。顔料は光を通さない(乾かしたときに顔料の粒の間、つまり水があったところから光が通る)のですが、染料は光をきれいに通すらしいです。
紙について、ほぼすべて奉書紙を使っています。あまりよく知らないのですがロンテックスという紙も使っているみたいです。北高でよく使われているロール紙は全く使っていません。
ここからは事実ではなく、なぜ北高では事前に色を塗るのかということの私の予想です。あっているかもしれませんし、間違っているかもしれません。
まず一つ目、みなさんもたぶんこれは納得してくれると思いますが、後塗りだとムラなく塗るのはかなり難しいというのがあります。私も練習でちょっと塗ってみたりしたことがあるのですが、刷毛塗りだと刷毛の線が出てしまって全然ダメでした。
二つ目、北高ではロール紙を使うことが多いですが、ロール紙は強度がないので、後塗りをするとすぐに破けてしまいます。以前は電源がバッテリーだったので光量が少なく、ロール紙のような薄くてよく透ける紙を使わざるを得ませんでした。現在は発電機になったので光量については問題ないと思います。ただロール紙は奉書紙に比べてかなり安いというのがあります。予算さえ問題なければロール紙を使う意味はないんじゃないかと思っています(あまり色塗りをわかっていない人間の意見です)。
三つ目は効率的に作業を行うためです。これもよく見かけるのですが、確かに結論としては効率のためだったりするのですが、その理由がちょっと違っているんじゃないかと思います。
というのは、たぶん効率的に作業を行えると言っている人は後塗りより前塗りのほうが早いという意味で使っていると思うのですが、後塗りって思ったより時間はかからないんですよね。
60th3-9の炎と魂の部分は後塗りだったのですが、あの範囲の色を3人日(1人が1日に行う作業量を1人日といいます)でやっています。これは前塗りだともっと時間がかかるんじゃないかと思っています。前塗りだと、色を塗ったけど使わない紙もあるし、紙を貼る際に余分な部分は切って捨ててしまうので。もちろん後塗りと前塗りで向き不向きはかなりありますが。そして、すべて後塗りになるとすると、事前に色を塗る部隊がいなくなるので、その人たちが針金を手伝えば何十パーセントかは針金が早くでき、そして針金部隊だった人が色塗りに参加すればこれも早く終わるでしょう。
と、まあここまでは理想論で、現実的に考えるとそんなに全員が針金も色塗りも全部できるわけがなく、それぞれに得意分野と苦手分野があると思います。なので得意分野によって完全に分業にしてしまい並行して進めたほうが結果的には効率的にかつ上手くできるんだと思います。
結論としては、塗りの技術(ムラなく・グラデーション)があって、全員が針金も色塗りもできる、ということなら後塗りのほうが圧倒的にきれいにそして早くできると思いますが、それ以外なら前塗りでやったほうが無難です。
ねぶたでは針金同士の固定にいわゆる細針は使わず、ビニロンという糸とボンドで針金を固定しています。
北高行灯では多くのクラスで、事前に土台と支柱をすべて組み立てたあと針金に入ると思いますが、ねぶたでは支柱も針金も並行に作ります。針金を作りながら、強度が足りないところに木材を差し込んでいく感じです。そしてその木材の数がかなり多く、そのおかげかほとんど揺れなくなっています。支柱がかなり入り組んでいるので電飾は至難の業だろうと思います。
また、ねぶたではパーツはすべて事前に作っておき、その後本体に入ります。
本体にパーツを合わせるのではなく、パーツに本体を合わせる感覚なのだと思います。
青森ねぶた祭公式サイトのねぶたができるまでや、ねぶた画廊のねぶた継承のページも参考にしてください。
北高行灯は最大でも10万円ほどしか使えませんが、ねぶたは1基に2000万円 (材料費だけではなく報酬・人件費なども込み) 使うそうです。
ねぶたは前年度のねぶたが終わった直後から、次年度の準備期間が始まります。
まずは祭りが終わってから約半年間かけて次の題材と構図を練り、下絵を描きます。
2月頃からは自宅やアトリエで手や面などのパーツの制作に入り、5月上旬からねぶた小屋 (テント) で作業が始まります。
そこから骨組み・電飾・紙張り・書き割り・ろう書き・色付けと進み、7月下旬に台上げ (ねぶたを引くための台にねぶたを乗せること。台には発電機が搭載されている。) が行われて完成です。
対して北高行灯は北高祭準備期間である約1ヶ月間、しかも一日4時間程度しか作業できず、持ち帰り作業も禁止されているので、圧倒的な時間の差があります。
参考: http://www.jr-morioka.com/nebuta/
青森ねぶた祭りは、毎年8/2~8/7です。曜日は関係ありません。
おすすめは6日です。6日には賞が発表されているはずなので、賞が書かれた看板が乗ったねぶたが見られます。また、全大型ねぶたが運行するのは6日だけです。他の日は運行しないねぶたもあります。
7日は昼にも運行しますが、夜は海上運行なので近くで光ったところを見れません。7日だけというのはあまりおすすめしません。
2019-07-27追記: 札幌青森間の寝台特急である急行はまなすについて記載していましたが、残念ながら2016年に運行が終了してしまいました。甲乙人は高2のときに急行はまなすに乗って一人でねぶたを見に行きました。
いろいろ行き方はあるので調べてみてください。
津軽海峡物語という高速バスとフェリーのプランが安いです(片道6000円)。このプランでは行ったことがないのでどうなのかはわかりません。
まったくないと思ったほうがいいと思います。一年前から予約をしないと取れないらしいです。料金も平常時と比べてかなり高いらしいです。
青森駅付近の宿が取れなければ、弘前など、ねぶた運行終了後から電車に乗ってもたどり着ける場所の宿も検討しましょう。弘前であれば青森駅から30分近くで移動できます。ねぶた終了後は券売機がとても混むので、帰りのきっぷは予め買っておきましょう。
高校生の方は宿泊する場合は保護者と行くか、一人で行くにしてもよく相談するようにしてください。
朝8時くらいにねぶた小屋が開きます。午前中はそれらを見るだけで時間が経ってしまうと思います。
午後は暑くなってくるので、下に書いたおすすめスポットを見に行きましょう。
4時くらいになったら街に行ってみます。街ではどこかでねぶた師の展覧会が開催されているかもしれないので、もし開催されていたらそれも見に行きましょう。また、ねぶた終了後は時間がないのでおみやげは夕方までに買っておきましょう。
その後は場所取りです。いい場所はすぐに埋まってしまいます。角の横断歩道であれば警察の誘導によって平和に場所を取れるかつ最高の観覧席なのでおすすめです。詳細は下の「見る場所」という節を参照。
その他年によってはねぶた師の展覧会が催されていることもあります。2008年は北村隆さんの展覧会が行われていました。
運が良ければねぶた師の方と会えるかもしれません。テント近くには普通にねぶた師の方が歩いていたりします。私は上に書いた展覧会で北村隆さんをお見かけしましたが、オーラが凄くて話しかけられませんでした。笑
17時半くらいまでグダグダしながら、どこでねぶたを見るか考えておきます。場所取りしてからは終了まで (終了後も) トイレに行きにくいので行っておきましょう。
時間の関係で一周回りきる前に終わってしまったりすることもある (これによって見たかったねぶたを逃すとかなり痛いです!) ので、絶対見ておきたいねぶたの対角線あたりがいいと思います。近すぎるとまだ明るいうちに見ることになります。各団体スタート地点
角ではねぶたが回ってくれるので送りも見れます。
角は早めに行けば安全に場所取りできてかつ有料観覧席よりも良い最高の観覧席になります。おすすめです。
北国写真帳というブログのこちらの記事も参考にしてください。
19時~21時までです。写真やムービーを撮りまくりましょう。
ねぶたの立体感を収めるにはムービーのほうがいいかもしれません。
終わり次第
残念ながら青森に行けない人は、YouTube Liveでライブ配信があります。
こちらから。
ねぶた師はねぶた制作のプロで、ねぶたに人生を捧げた職人です。行灯を作るのが上手い人を“職人”と呼ぶのは私は否定的 (たかが3回やった程度で職人とか、と思う) なのですが、こちらは本物の職人です。
ねぶたはこのねぶた師が中心となって作られます。1基のねぶたに1人のねぶた師です。
最近 (2014年) の主なねぶた師を紹介しておきます。(敬称略、順不同)
北村系
千葉系
我生会
ねぶた師のなかでも極めて高い技術を有し、ねぶた祭の発展に寄与してきたねぶた師には名人位が贈られます。公式の説明
一代目は北川金三郎氏、二代目は北川啓三氏、三代目は佐藤伝蔵氏、四代目は鹿内一生氏、五代目は千葉作龍氏、六代目は北村隆氏です。
スポンサーです。団体ごとに1基のねぶたを作ります。ねぶた師は団体を掛け持ちして作ることもあります。
公式サイトの説明を読むとだいたいわかると思います。
審査に関するエッセイを読むと、ねぶたも審査でいろいろあるんだなということがわかります。
ねぶたの魅力に取りつかれ、ねぶた馬鹿になってしまった方は、ねぶた関連書籍を買って読むといいと思います。
最近ではねぶたの世界への発信とねぶた師の研究費の確保のために、ねぶた作りの技術を応用した商品や役目を終えたねぶたの一部を使った商品が多くでてきています。
これでも物足りないねぶた馬鹿の人はこのページを見るといいかも。
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