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69th3-1の記録
#0.まえがき [![全景](/files/images/thumbnail/1559825905783-pic14.jpg)](/files/images/fullsize/1559825905783-pic14.jpg) 四神をテーマにした行灯「画獣点睛」を制作した69期3-1です。僕らの行灯は妥協なしの丁寧さゆえ、不完全なままでの行列本番となってしまいました。しかし、こだわったポイントの数々がきっと役に立つことがあるだろうと思い、記録として残します。この記事の作成に当たって、多くの仲間が稿を寄せてくれました。時系列に沿った制作記録はわれらが69th大賞の記事を読んでいただいて、こちらをテクニック集のように参考にしていただければ、と思います >(行責から)まず、投稿がこのタイミングになってしまったことを関係する皆さんにおわびします。この記事は行灯職人への道の運営方針に従い、現役生の方の可能性を狭めることのないように配慮したつもりです。すでに自分のスタイルが確立している(特に3年生の)皆さんについては、この記事にとらわれることなく良いと思うやり方を洗練させていってほしいと思います。 #目次 1. 基本データ 2. 作業開始前 3. 制作中の気づき 4. 各セクションのリーダーから 5. その他 6. あとがき #1.基本データ 題名 : **画獣点睛** 紹介文 : 昔、人里離れた山の中に飛び抜けた絵の才能を持つ男がいた。寝る間食う間を惜しんで一心不乱に描いていたのは、東西南北の四方を守る神々の絵。目を入れられた霊獣たちが、今、動き出す! 製作費 : 10万円程度 ##メンバー 準備期間から参加していた6.7人の中で大雑把に割り振りをしましたが、実際に作っているときはみんな流動的になっていたと思います。 行責 : 2人とも行責経験者。一人はロウ・青龍担当で、もう一人(筆者)は全体を見ながら材料の管理等の雑用をしていました。 四神 : 1体ずつリーダーを決めて、針金を考えてもらいました。色、柄、墨入れもデザイン担当と相談しながら決めてもらいました。 デザイン : 下絵を描いてくれた人(龍一郎の父)と、作業開始後に急遽担当になってくれた人の二人で色と柄の大部分を作ってくれました。 電飾 : 電飾班として4人ほど選出。レセップ作りなどの単純作業は8人ほど集めて一気に片づけてくれました。 この他にも、構図の絵を作ってくれた人、紙貼りの楽しさに目覚めた人、大量の鳥の羽を作ってくれた人たちなどなど、クラスほぼ全員が何らかのかたちで関わってくれました。 ##材料 おおよそ次の通りです。 [![材料](/files/images/thumbnail/1559825905782-pic1.jpg)](/files/images/fullsize/1559825905782-pic1.jpg) >ローケツ筆は大通りのマリヤ手芸店で中を2本買いました。小360中380大440(税抜き) #2.作業開始前 ##題材決め 四神を作る案はかなり初期から出ていましたが、構図や作業量などの難易度が高すぎるということですぐには決定できませんでした。他の候補絵も作ってもらい、それぞれの題材のポイントをできるだけわかりやすくしたうえで投票にしました。今思えば、この時から理想主義が始まっていたのかもしれません。 ##構図とデザイン オブジェクトの数か多すぎて2次元の絵で想像するのはとても無理だとわかったので、早々に粘土で考えることにしました。 [![粘土模型](/files/images/thumbnail/1559825905782-pic2.JPG)](/files/images/fullsize/1559825905782-pic2.JPG) >通常、油粘土で試作品を作り、紙粘土で模型を作って色塗りをするというのが多いが、今年は題材が難しく、油粘土での試作品作成に時間がかかったうえに(主に配置決め)、一度は紙粘土での模型作りを試みたものの、あまり上手くいかなかった、そこで、油粘土の上から紙粘土で薄く覆っていくと思いの外しっかり固まったので、油粘土でしっかり作り込んでから紙粘土で覆うと時間の短縮に繋がると思われる。 規格に収まるようにパーツの配置をいろいろ試すうちに、動物の自然なバランスがつかめてきたように思います。制作前では一番時間を使いました。着色までは間に合いませんでしたが、白の紙粘土でも迫力は出せます。 この段階では物同士の隙間を埋める要素を作っていませんでした。絵師の筆から出る墨の線で全体をまとめ上げる、という方針は共有できていたのですが、造形のイメージを口頭で伝えるのには限界があります。実物を見ながらということで先にして、模型の段階では先送りしました。 #3.制作中の気づき ##パーツごとに分けて作る手法について [![白虎の例](/files/images/thumbnail/1559825909729-pic7.jpg)](/files/images/fullsize/1559825909729-pic7.jpg) 粘土をパーツごとに作っていたので、実物でもその通りにするのが考えやすいと判断しました。テントの外で支柱の干渉を受けずに作ることができるので、造形のバランスがとりやすいです。紙貼り、色塗りをパーツそれぞれ同時に進められるのもメリットです。下のほうに配置する玄武の甲羅や、時間のかかる龍などは向いていました。 一方で、個々の大きさの比較(=全体のバランス)がおろそかになりがちなのも事実で、置き合わせてみたときには手直しがきかないところまで作ってしまっていたこともありました。もっとこまめに確認していれば、というのは大きな反省点です。 白虎の頭部を木材に固定して、後から差し込むように作業を進めていましたが、高所での設置作業は思うように調整するのが難しいです。また、大きなパーツは吊り下げると針金の自重で縦に伸びるのが想定外でした。 ##紙貼り 紙貼りの出来栄えは、紙を針金の直線・曲線にどこまで近づけられるかによってかなり変わると思います。 >ただの小さいはさみじゃなくて、眉毛カット用の先が尖ってて、曲がってるやつが細かく切れる 3-1紙貼り女子的に1番良い眉毛ばさみはキャンドゥの動物、個人的に次に良いのはキャンドゥの普通のやつ、ものとか人とかによって使いやすさとか好みとかが違うからまとめ買いは事前にするより色々使ってみてからの方がいいのかも >紙貼りのはさみを水につけて帰ると次の日にはボンドが大体とれてて良かった ##配色と色塗り パッと見たときの色の印象はやはり面積で決まります。3-1は単純に白と赤が特に上部に多かったので目立ちました。 青龍には暗くならない青を意識しましたが、少し小さめにできてしまったこともあって、見る人にとって存在感が薄く感じられたかもしれません。架空のものの色使いは人によってイメージも違うので研究の余地があります。 裏面の羽には人と時間をつぎ込んで一枚一枚にグラデーションをつけ、羽全体でも色合いが変わるように作られています。想像を絶するほどの労力をかけて羽を作りあげてくれたのにはもう感謝しかありません。 [![朱雀の羽](/files/images/thumbnail/1559825909699-pic4.jpg)](/files/images/fullsize/1559825909699-pic4.jpg) >*ガッシュ ・レモン色、空色は鮮やかでパキッとしてて混ぜては作れない感じだった、個人的におすすめ ・他の色は黒白赤青緑黄があれば作れる >*先塗り ・魚肉トレーはそこが浅くてひっくり返りやすかったので底が5センチぐらいあるトレーの方が使いやすかった ・グラデーションはガッシュ水多めにして、塗ったガッシュをスポンジで吸収するといいかんじになる(朱雀の羽) ・水の量を変えるだけでもグラデーションになる(朱雀の触覚(?)の紫とか蛇の甲羅) ・メイクスポンジおすすめ(個人的に一番好きなのは涙型、四角はおすすめしない角の跡がつく) ・蛇のまだらっぽいやつはほぼ水みたいな黄色を塗った後に水少なめの黒緑とか紫をのせたらあんなかんじになった[![蛇](/files/images/thumbnail/1559825909703-pic3.jpg)](/files/images/fullsize/1559825909703-pic3.jpg) ・ハケの毛先を切ってガタガタにしたら毛並みっぽい塗り残しを作れる(白虎の白と青筋) ・がっつり色を変えないとグラデーションわかりずらい [![グラデーション1](/files/images/thumbnail/1559825905782-pic5.jpg)](/files/images/fullsize/1559825905782-pic5.jpg) [![グラデーション2](/files/images/thumbnail/1559825905782-pic9.jpg)](/files/images/fullsize/1559825905782-pic9.jpg) >・先塗りする部分に関して、何枚ぐらい必要か、日や人によって色に大きな違いはないかとかを紙貼りと色塗りの中で誰かが連携を取ってないと、多く塗ってもらいすぎたり、直前になって足りなくなったり、色が違いすぎたりして効率が悪い。枚数と色に関して把握してる人が必要だと思った >*あと塗り ・ガッシュはボンド弾いちゃうので紙張注意(墨ははじかなかった) ・スポンジでぽんぽんあと塗りしてたら紙がはがれてしまうことが何回かあった ##ロウ >龍と兼任でロウを担当しました。 ・準備したものは、パラフィン(カナリヤ)、ろう筆(マリヤ手芸店)、鍋、電熱器、魔法瓶、クレヨンです。 ・ロウにはパラフィンを使用しました。他のものを使ったことはないですが、溶けやすくて使いやすかったです。鍋と電熱器は生徒会から借りました。ロウは電熱器にこぼさないように注意しましょう。魔法瓶は高いですがあったほうがいいです。始め水筒を使っていましたが、保温効果は全然違ったみたいです。それでもこまめに温めないとかたまりができて筆がぼそぼそになります。 ・3-1では、各四神の目、朱雀の模様、朱雀の羽の隙間部分(地肌に当たるところ)、龍の肌、歯や爪などにロウを使いました。実際にロウを塗ったのはほぼそれぞれの担当者です。 >○四神の目 目に黄色いロウ ○朱雀 朱雀のお腹部分は模様の縁取り 朱雀の羽の地肌部分(?)はガッシュで赤く塗った紙を貼ると重なって暗くなってしまうということで、赤いロウを塗って貼りました。 [![朱雀の地肌](/files/images/thumbnail/1559825909410-pic6.jpg)](/files/images/fullsize/1559825909410-pic6.jpg) ○龍→普通の白いロウと黄色いロウを散らす メインの龍ならもっと派手に使っていいと思います。 [![龍のロウ点](/files/images/thumbnail/1559825905783-pic8.jpg)](/files/images/fullsize/1559825905783-pic8.jpg) ・色付きのロウについて 色付きのロウは、パラフィンを鍋に溶かして、使いたい色のクレヨンを入れて作ります。色やクレヨンによって入れるクレヨンの量が違うので、必ず実験はしましょう(参考:赤のろうはあの色の濃さで奉書紙5枚分のパラフィンに2cmぐらいのクレヨン)。ろう筆は色の数だけ準備したほうがいいです。2色以上同時に使うときも、その数だけ鍋を準備しましょう。アレンジはキャンドルの作り方などを参考にしてください。 >まとめ パラフィンについて調べていたときにキャンドルづくりのページが沢山出てきて、パラフィンに着色してるのがすごく綺麗だったので、行灯でもいけんじゃね!!??って思ってやってみましたが意外といけました。色以外でももっとアレンジはきくと思うし、色付きのロウもぜひ真似してほしいです。 あと、3-1のろうはデザイン段階であまりろうについて考えていなかったので、ろうを派手に使うクラスは計画性を大事にしましょう。 参考になったら嬉しいです。 #4.各セクションのリーダーから ##青龍〜龍一郎の作り方〜 >・まず名前を決めます(私たちの龍の名前は天宮龍一郎です。)←日に日に親心が出てきます。愛でるようになります。きっと最終日龍に食べられる写真を撮っていることでしょう。(ジョーズ的な) ・虎や蛇同様、龍も上顎と下顎を別々に作りました。上顎と下顎別々に作ると、作っている途中で崩れにくい、後からでも形の修正をしやすいといった利点があります。 ・下顎についているヒゲ(手前の短いやつ)は紙張のことを考えずに針金をやってしまうと紙張さんに怒られるので気をつけて作ってください。(怒られました。とても。)時間が無いとほんとに貼れません。 ・上顎についている細いヒゲは全体のバランスを見て決めると良いです。長くすればするほど揺れますが、くねくねさせて他の部分にくっつけたりして固定したり工夫をしてみてください。また、ヒゲが長くなるほど全く光らなくなってしまいます。そんな時は、ケミカルライト〜!(byドラ〇もん)結構明るく光ってくれます。ですが、いれる場所を間違えると光ってないように見えてしまうのでこれも研究した方が良いかな・・・出発前に光らせたのを入れて紙を貼ります。ケミカルライトは百均で売ってるのでLEDテープよりもコストも安く、手間もかかりません。 ・鼻は鼻で龍全体のバランスをとる感じです。ねぶたの画像を探すと、しぶい龍、アニメっぽい龍、迫力ある龍、綺麗な龍などなど、いろいろな種類の龍がいるので、よくよく研究してイメージを膨らませて作ってください。 ・色は、ろう点を飛ばした紙を何枚も作っておいて、顔は全てそれを使いました。そこから光が漏れてくれるので、青を塗っても暗くなりすぎずにできたかなと思います。作る前は発疹っぽくなってしまわないか心配でしたが大丈夫でした。ろう点を前もって飛ばしておくのは色々なところにも使えそうなのでオススメします。 これらは私たちの失敗談でも成功談でもあります。少しでも参考になれば良いなと思います。 By天宮龍一郎の両親 ##玄武 >・亀 最初に正確な幅や高さなどを決めていない状態で甲羅から作り始めると後に顔の大きさとのバランスが取りづらくなるので注意、顔から作り始めた方が全体的なバランスは取りやすいと感じた。 今回の場合は作業スペースの確保のために早々に実際の位置に玄武を固定することができず、紙貼りをどこまで行えば良いのか正確に分からず、最終的に紙貼りが行き届かないところがあった。 >・蛇 針金を最終的な蛇の形にした状態で輪っかを付けていくと後で歪みが少なくなるが、後塗りならば歪んでいても問題はないと思われる(個人的に歪みが無い方が綺麗に見えるかなーと...)、針金が長い分には後で切れるので特に問題は無い。 顔は上顎と下顎で別々に制作し、繋げたものを胴体と接合したが、この場合は蛇の口を開くために上顎を支えることに難航した、最終的に朱雀の胴体にくっつけた、また胴体と顔の境目が分かりづらくなり、紙を貼りづらくなるので早々に対処が必要。 ##白虎 >虎の顔の作り方について ・とりあえず虎について調べまくって欲しい。特に55期の巫儀巡礼を参考にしてそれを超えるものを作って欲しい。 ・針金 顔のパーツごとに作る部位を考える。ただ分けて作ると後々合わせるときに紙貼りなどが大変になるので1つの塊にして作った方がいいと思う。針金を作る前に絶対絵を描く。上顎の出っ張っている部分をうまく作れると虎に近くなる。たてがみもあるとより良い。 #5.その他 まとめきれなかった点を箇条書きで挙げます。 >・水が入ったペットボトルを何個か作っておくと重りにもなるし筆とかも洗えるし良い >・先塗りした奉書紙を置いて乾かせるように新聞6枚ぐらいをガムテでとめたやつを作っておくと朝教室での色塗り作業の準備が楽(ある程度かわいたら挟んだりもできる) >・下から針金を安定して固定することが出来る優れもの(?)。人呼んで「T字ブリッジ」(「男塾」の「万人橋」から)[![T字ブリッジ](/files/images/thumbnail/1559825909121-pic13.jpg)](/files/images/fullsize/1559825909121-pic13.jpg) 支柱用の補助金具とラグビー部に余っていたボルトとナットで作成 >・行灯当日教室に入れる時間が4時まで(?)とかだったから目とか最後にロウをいれたくてもいれられない >・指にテーピングを巻いて針金をやると、ペンチをいちいち使わなくて指だけで止めれるからペンチは締める時だけで大丈夫だから、すごい作業早くなる。欠点としては、きつくは留めるの難しいことと、スマホが使いにくくなること。 >・上の方の人だけでも優先順位を共有しながら作業する。行責とか針金チーフ、色塗りチーフとかでそれなりに話し合って、優先順位が高い順に仕事を割り振るべき。特に最後の方の紙貼り。絶対にやらなきゃいけない所、早めに終わらせて次の作業がある所とかをやってもらうべき >・行責には全体を管理する責任がある。こだわりとスピードのバランスをとるためには、どこかの作業を途中で止める・断念するという厳しい決断を下さなければならない時もある。でも全体の完成を諦めてはならない。 >・暇な人がいると、他の人も作業したくなくなるし、人も時間ももったいないからどんどん仕事を頼むべき >・多体の行灯を作るときに一体ずつ作るなら途中で何回か合わせて見てサイズ感を調整するといいと思う。今回はそれがなかったから失敗した。 >・なかなか人や鬼をメインにしないで動物で作る行灯はないがこういうオリジナリティのあるものもチャレンジして見て欲しい。 >・ボンド流出事件とは、朝テントに来てみるとそこら中一面にボンドが流れ出ていた騒動のことである。不安定な木材の上にボンドの缶を置いて作業を終了したところ、夜間に何らかの原因により地面に落ち、その衝撃によってふたが開いたものと推定されている。奇しくもその晩は雨模様であったため、溶けだしたボンドがテントの外、広範囲にわたって拡散した。アスファルトの上に広がった模様はさながら天の川のようであったという。 [![ボンド](/files/images/thumbnail/1559825909879-pic10.jpg)](/files/images/fullsize/1559825909879-pic10.jpg) 一缶まるまるむだにしてしまいました。くれぐれも気を付けて管理しましょう。 >・とりあえず楽しむべきである。これはほんとに大事だと思ってたし、今も思う >・模様の中にこっそり埋め込まれた2人の先生の名前(担任・副担任) [![名前1](/files/images/thumbnail/1559825905782-pic11.jpg)](/files/images/fullsize/1559825905782-pic11.jpg) [![名前2](/files/images/thumbnail/1559825905783-pic12.jpg)](/files/images/fullsize/1559825905783-pic12.jpg) >・行灯は作ってない時が(も?)楽しい(笑) #6.あとがき ここに書かれていることがすべて真とは限りません(楽しい、ということを除く)。私たち3-1で失敗したことがうまくできる可能性はありますし、またその逆もあり得ます。このような記録も参考にしつつ、新たな道を切り開いてくれたらと思います。 行灯が一生もの、というのは本当です。これまでに作った行灯を忘れたことはないですし、またこれからも一生忘れることはないでしょう。 長くなりましたが、最後まで読んでくださりありがとうございました!
2019/06/06 22:24:48 の更新