講評 |
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甲乙人
- これほど欠点がない行灯はないと思います。蜘蛛の色とか裏の一枚絵とかどうやって塗っているんでしょうか……。あと左足の指がいい。土台さえ行灯の一部という感じがします。生で見たかったです。
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仕掛人
- 『完成度の高さ』・『色の美しさ』・『針金の正確さ』・『紙貼りの丁寧さ』において、今年の行灯の中で最も優れていました。そういう意味で文句なしの行灯大賞だったと僕は思います(三年生は本当にレベルが高く僅差でしたが…)。針金は全体的に丁寧かつ正確。特に手・足・顔は今年の中で最も正確で丁寧なつくりだった。これほど丁寧なつくりの手足顔は過去にも見たことがない。墨入れも完璧だった。電飾は全体的にしっかり光っていた。蜘蛛は色・電飾があまりにも難しい。ところがこのクラスは、黒とオリジナリティあふれる奇抜な柄のおかげで大成功だったと思う。夜光ってもメリハリがあって素晴らしかった。作戦勝ちとはまさにこのこと。だが、人の肌色の明るさが物足りなかった気がしてしまった(この行灯を見る前に1組の有り得ないほど明るい電飾を見せ付けられていただけに…)。紙塗りは歴代最高レベルと言って過言ではないでしょう。一般的に使う紙とは違う高級紙を使ったらしいが、言うまでもなく、それを凌駕するだけの高い塗りの技術も備わっていたからこそ成功できたのだと思う。特にロウの使い方が神業で、裏の絵・腕の龍・炎のグラデーション・服赤と黒の柄etcで使っている。ロウを塗った部分と、普通に色を塗った部分の光の透け具合に微妙な差が出て、これが何ともいえない絶妙な光のコントラストを奏でている。それがどれほど美しいものであるかは裏側の絵を見れば一目瞭然であろう。まさに神業。この写真を見て『くっそー裏が光ったところもぜひ生で見ておけばよかった…』と本気で悔やむ人も多いのではないだろうか(ま、審査の都合上、表しか見れなかった僕のことですが(泣))。とにかく本当にこのクラスの紙塗りの女子には脱帽でした。 ただ、以上で述べた部分があまりに優れていて素晴らしい出来だっただけに、行灯評論家としてついつい要求したくなる部分も出てしまいました(あくまでも個人的な意見ですので読み流してください)。まず蜘蛛を貫いた剣。発想は素晴らしいんですが、例えば蜘蛛の体液・血を剣に付着させる等のもう少しリアリスティックな生々しさが欲しかった(もちろん優秀な職人である彼らならその辺については十分検討したと思うけど)。実際に蜘蛛を剣で貫いたらべっとりと生々しい血や体液が付着するはずなので、僕個人としてはどうもイマイチ蜘蛛が剣で刺されている感じがしなくてそこが残念でならなかった(しかもタイトルが『土蜘蛛死ス』なだけに…)。あともう一つ、右手の蜘蛛の足を掴むという発想も素晴らしいのですが、この右手がどの方向に動いているのか分からなく、手前に引いているのか?、押しているのか?、それとも蜘蛛の足を引きちぎろうとしているのか?…この辺がいまいち伝わりませんでした(これもかなり個人的な意見ですが)。
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