講評 |
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甲乙人
- 行灯職人への道創設者の期である51st以来の1組での大賞ですね。「1組は大賞を取れない」というジンクスを覆したと思います。とても素晴らしい行灯でした。
まずはなんといっても色塗りがとても綺麗です。 昨年度の大賞の色もすごかったですが、こちらの行灯もこれまでの行灯とはまったく違った塗りで、新しい伝統になりそうな気がします。グラデーションもとても綺麗で、そしてロウもとても効果的に使っています。正しいロウの使い方という感じです。個人的に色塗りがいい行灯が大賞を取るのはとても嬉しいので今後も続いて欲しいです。
次に龍!北高行灯の中では最高の龍なのでは?という感想です。私のクラスの龍と作り方や塗り方など似ていますが (参考にしていただいたと聞きました)、こちらのほうが全然いいです笑 大きさのバランスもよく針金も丁寧ですし、色塗りもいい (随所にロウが引かれていてみずみずしさを感じます) し電飾もいいです。素晴らしい。
次に顔。髪がいい感じですね。見ただけで「お、これ北村麻子さんのあれを参考にしているな?」というのがわかりましたが、墨書きは少しアレンジを加えているみたいで (それとも針金のせいで書くにくいとかでたまたまそうなってしまっただけでしょうか)、光が当たって髪が縞模様になっている感じが出ていてよかったです。面の方は、ちょっと目のあたりが違和感がある (目が近い、黒目の位置が上すぎる、青が消えていたのでもったいない) ように思いましたが、いい面だと思います。
次に行灯本体とは関係ないところで、 チーム間の連携を密に行っていたと聞いていて、そのあたりを重視しているのも素晴らしいなと思いました。行灯ノート、見てみたいです。
あとはやっぱ質問力ですね笑 いろいろな卒業生がこのクラスの方から質問を受けたと言っていました。ねぶたの関係者の方にも質問していたのを見ました。個人的にすごいなと思ったのが、質問をしていた人が一人ではないことで、こういうのって熱心な人が一人だけ活動しているというような状況に陥りやすいので、そのあたりクラスで一丸となっていい行灯をつくろうとしていたのだなというのが伝わってきました。 (これを見て、じゃあ質問しまくろうと思った方に注意ですが、まず質問は相手に時間を取らせてしまう行為なので、なんでも答えてもらえるとは限らないということを理解しておくことと、できるだけ具体的に、答えやすい質問にするというのが重要なのかなと思います。そのあたり気をつけて質問してみてください。甲乙人への質問は雑な質問でも大丈夫です。)
次に構図の話をしたいと思います。 この行灯 (66th大賞の紅葉狩もそうですが) は、行灯の奥行きを1/2~1/3くらいに切って背面側を壁にし、背面には絵を、表側は人間などをその壁に埋めてしまう、という手法をとっています (以降この手法のことを「壁」と呼びます)。 このクラスの方の話を聞くと近年の傾向から狙って壁を作ったということで、せっかくなので壁について考えてみたいと思います。
壁はメリット・デメリットが大きい手法だと思っています。 まずメリットとしてはコスパがいいことです。壁は針金も簡単 (一部立体になっているものもありますが、それでも表面積が小さいことや多少おかしくても気にならない) ですし、紙貼りについても基本平面なのでとても簡単です。後塗り多用の昨今からすると針金・紙貼りはスケジュール的に完全にボトルネックになるので、この時間を短縮できるのはかなりいいです。 次に北高行灯の規格の奥行きのなさをカバーできること。構図的にはこれがでかいです。北高行灯は奥行きが1.8mでかなり小さく、身体全部を出しているとどうしても窮屈になってしまいます。壁に身体を埋めて、本当に重要な部分だけを立体にすることで窮屈さは出なくなるように思います。
壁を成功させるために必須になるのが絵と柄です。針金による立体表現を捨ててしまうため絵や柄で表現するしかありません。また、壁によって背面は表とほぼ隔離されるため、壁は壁で一つなにかを表現しなければいけません。66th3-4だと紅葉と和傘、67th3-1だと夜桜と雲 (ですよね?) です。この2クラスはこの印象付けがとてもうまくいっています。
壁の致命的なデメリットとしては、行灯の立体感がなくなる・壁と登場人物が同化するというものがあります。壁を採用するかどうかはこれを許せるか許せないかだと思います。また、これはそれぞれの好みにもよるかもしれないですが、1つの行灯の中に2つの世界ができるということもあると思います。
この行灯は壁のメリットをとてもうまく使っていますし、背面の表現もとてもよかったので大成功だと思います。が、やはり立体感のなさや壁との同化は感じてしまいます。ぱっと見だと、「顔と龍がいるな。お、女性の顔もある。他はどうなってるのかわからないけど綺麗だな」という印象になってしまいます。特に人物の腕、武器、は良く出来ているのに全然目立たないです。これはもったいない。この行灯は書き割りが少ないので書き割りをするともう少しは同化を感じなくなるかもしれませんが、同化のリスクを分かった上での行灯だと思うので、それはしょうがないという感じかもしれません。
壁については何よりハマったときのコスパがとてもいいので、作業時間が短くなっていっている近年の北高行灯ではこの傾向が続くのではないかなと思います。
(この文は紹介文を知る前に書いていますが、) あと知りたいのが龍がなぜいるのか、女性は誰なのか、後ろはなぜ桜なのか (夏の陣なのに桜?)、ということですが、これは紹介文に書いてあるはずなので紹介文を楽しみにしておきます。
(謝辞:この講評は灯雪会メンバー間で話した、私では考えつかなかった内容がかなり多く含まれています。どの部分か特に明記はしませんが、この場で御礼申し上げます)
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