クラス 69th3年5組
タイトル 小町桜
行灯大賞
紹介文 時は平安、逢坂の関。降り積もる雪の中、狂い咲く一本の桜 —その名も「小町桜」。小野小町の歌により盛りの色を増した桜のもと、天下を狙う大悪人大伴黒主と、恋人を殺された仇を討つため桜の精の姿を現した薄墨、今宵激しく争い合う。妖しくも美しい恋の物語。
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講評
保証人
5組が大賞を取ったのは行灯職人への道に残っている記録上初めてだと思います。
制作期間悪天候が続いた中この完成度は素晴らしいです。

まず触れたいのが、この行灯にはほとんど色ムラがないということです。桜・着物などにロンテックスを使用したとのことですが、柄の境界においてロウ塗りがしっかりされていたので、色が染みこんでいって隣の色と混ざってしまうことを上手く回避できていました。北高行灯ではおそらく初めての試みでしたが、成功していてすごいです。
また、配色関連でいうと、雪(寒色)と桜(暖色)で季節感が存分に発揮されつつ、色の対比もなされていて、綺麗な行灯だと感じました

また、色塗り以外でも、針金・電飾・紙貼りなどといった作業全体が丁寧に行なわれているという印象を受けました。これは全員が正しいやり方をしないと達成できないことなので、クラス内での情報伝達がうまくいっていたのだと思います。

男性についてです。全身が作られていて躍動感があると同時に、顔の上手さや墨入れからねぶたらしさを感じました。あと、ただ斧を持っているというようには見えず、他の行灯よりも「戦っている感」が伝わってきました。
また、女性を制作する際、男性に比較して顔や胴体の大きさで違和感が生じることが多いと思っているのですが、この行灯ではそういったものは感じませんでした。かなりバランスが取れていたと思います。着物の花の柄も綺麗でした。

このように人物が上下逆さまになっている構図ではその人物が分かりにくく、見えにくくなることが多いのですが、ぱっと見で理解することができました。おそらく詰め込みすぎていない構図だからだと思います(あと、女性の顔の白色がムラなくしっかり光っていたことも要因だと思います)。近年は大賞が多体傾向にあったのですが、このように人2人が対立しているという構図でもクオリティ次第では大賞が取れるということを示してくれました。

69th3-5の記録に書かれていますが、男の人の服の柄は「春と冬」を表している源氏香であったり、裏面において桜が歌により白黒から色を取り戻していく様子であったりなど、細かい部分にまで意味づけがされていました。見ている人全員に伝わるものではないと思いますが、こういった工夫が行灯の世界観をさらに引き立ててくれると思うので、これからも続いていってほしいこだわり方だと思いました。

おこがましいですが、どうすればもっとよくなるのかを考えてみました。
正面から見た際に暖色が多くなってしまっているので、行灯の真ん中に雪を配置したり、女性の着物の色を変える(着物の色は寒色にして、ピンクの柄をたくさん入れるなど)と、メリハリのある行灯になったかなと思います。
また、男性について、前傾姿勢にするとより勢いが出たのではないでしょうか。

最後に、行灯大賞おめでとうございました!
甲乙人
とにかく色がきれい!桜も雪も着物もとてもきれいな色です。配色も素晴らしい (特に裏)。
柄 (特に桜と女性の着物の花) はブレがなく、一つ一つがとても丁寧に塗られていて塗った方の職人魂を感じました。これ以上のものはこれから出てこないのではないでしょうか…。
上いっぱいまで桜で埋め尽くしていて、この年の全行灯の中で一番大きく見えました。作るのがめちゃくちゃ大変だったのではと思います。僕が書いた記事では気軽に「上の方の体積大きめにするといいよ」と言っていますが、いざやってみると「なんだよこれやってらんねーよ」となるくらいとても難しい (高所作業でフラストレーションが溜まる) んですよね。灯雪会の初制作行灯でもこのような高所作業を行いましたが、半分諦めに入っていました(笑)。このクラスはてっぺんまで色を塗っていて素直にすごいと思います。どうやったんでしょうか?
次に後ろの吊り下げられた桜の花びらですが、こういう小技、僕はすごく好きで、なんか現役生が工夫しているところが見えてちょっと嬉しくなるんですよね。青春が見えるというか、なんかエモい。…意味わかんないこと言ってる気がしてきましたが、とにかくこういう小さな工夫でも(もちろん大きな工夫でも)やってもらえたらできる限り取り上げるのでぜひ後輩のみなさんもやってもらえたらと思います。ここ気づいてほしかったみたいなのもあればぜひ教えてください。
構図ですが、正面から見たときに斧が顔に若干被っている点が非常にもったいなかったです。正面向かって左から見たときに桜ビームとも少し被っていました。この構図であれば、男の額を前に出し、できれば向かって左の空いたスペースに傾ける、くらいで避けられるんではないかと思います。そうすればもっとよくなりそうです。
墨入れはとても丁寧で、3年生は基本的に時間が足りなくて墨入れを省略してしまう傾向にあるのですが、こちらの行灯はしっかり太く書かれていてとても素晴らしいです。桜・着物の柄・雪のロウもしっかり付けられているし、とても大変だったのではないでしょうか?めちゃくちゃキレイにロウの透明な線が出ていると思います。すごい。
素晴らしい行灯なので全体的にエモめな講評になってしまって申し訳ないです。
大賞おめでとうございます!