記録の作成が遅くなってしまい申し訳ありません!
2016年に「ポイヤウンペとルロアイカムイの戦い」を制作した灯雪会です。
この記事はより詳しい情報を載せるために、複数の執筆者をとる形式にしています。
また、内容は随時更新されていきます。
灯雪会は行灯制作を目的としたサークルです。2016年3月から発足メンバーを集め始め、現在は大学生から社会人まで、所在地も全国各地の、札幌北高校の卒業生で活動しています。
詳しくは行灯制作集団 灯雪会まで。
主要メンバーは8人でした。その中で担当を大きく
-支柱
-針金
-電飾
-色塗り
のように分けて、責任者も決めましたが、自分の担当以外のこともやるケースが多かったと思います。
高校時代の行灯制作と違って、当然ですが僕たちには北高の教員駐車場という作業場所がありません。なので、まずは場所探しから始めました。場所が決まらないと、どれくらいの大きさの行灯を制作できるか分からなかったので最優先で行いました。幸運にも、当時メンバーの1人が在学中であった大学の札幌市立大学の大学祭に展示できることになったので、予想よりスムーズに制作場所を決めることができました。大学内でもいくつか候補があったのですが、風通りが良く、広く、ある程度の暗さも確保できるE棟地下という場所で制作することになりました。
場所が決まったので、次に構図を考えていきました。ここでは構図を指します。
今年はテーマや物語からではなく、要素から題材を決めることにしました。理由は、北高は要素から決めることが多く、北高のように制作しよう!と話し合ったからです。
灯雪会の名前にも入っているように、「雪」を取り入れて季節感を出してみたいという意見が出ました。
他にも
-筋肉表現
-奥行き(規格が大きいので)
-武器
-西洋
-海
-空
-煙、霧
といったような意見が出ました。
その後も話し合いを重ね、最終的に雪を取り入れて作ることが決まりました。
しかし、雪が中心となるような物語があまり見つからなかったので、北海道や冬の伝説・物語をベースとして、そこに雪を入れるという方針で考えていくことにしました。
7月上旬の話し合いで、メンバーの1人が「ポイヤウンペとルロアイカムイ」についての伝説を見つけ、題材が決定しました。
北高祭の学プロの日にひたすら行灯を見た後、近くのアークスに行って粘土をこねました。
実際に立体にしてみて、どのような感じになるのかを見る程度だったので、そこまで本格的に作ってはいません。
こんにちは、しょうゆ[Twitter:@htd_andon]です。
制作開始前の構図決めの終盤は3DCGを使って行いました。メンバーがそれぞれ遠隔地にいるため、実際に集まって話し合う機会を設けるのは難しかったため、3DCGソフトで作業している画面をjoin.meというサービスを使って共有しながら話し合いを進めました。使用したソフトはMayaです。
完成した3DCGのデータは、スクリーンショットやファイルそのものを共有したり、SketchFabというサービスを使って共有しました。昨年度SketchFabで共有したデータはこちらから見ることが出来ます。
さて、実際に使ってみた感想ですが、率直に言ってとてもよかったです。
3DCGの利点については技術公開の欄にも載せるのでここでは簡単なものにしますが、「こうしてみたらどうだろう」というものをいくつも試せたので、より良い構図に出来たのではと思います。また、join.meのお陰でメンバーがお互い遠隔地に居てもイメージの共有をスムーズに行うことができました。
購入品については、材料ネット最安値の記事にも一部載っています。
-コーススレッド(75mm 400本入×3個、32mm 180本入×3個)
-L字金具65mm 20個
-ひら金物20個
-木材(垂木×90本、松荒材30mm*30mm*3650mm×30本)
-ブルーシート3.6m*5.4m 薄3枚、厚2枚
-ボンド速乾ボトルタイプ3kg 4個
-ステープルNo.1 60個入×2個
ひら金物はモノタロウ、それ以外はジョイフルエーケーで購入しました。
-#10 25kg巻 2個
-#12 5kg巻 16個
-#14 5kg巻 6個
-結束線10kg 2個
太金は秋本勇吉商店、結束線はモノタロウで購入しました。
-電球色2個入り×30個
-昼光色2個入り×50個
-LEDテープ、ACアダプター
-発電機(レンタル)
-ガソリン
-コード
-ビニールテープ
-電源タップ
-レセップ
LEDテープ、ACアダプターはAmazon、発電機はダスキンレントオール、ガソリンはENEOS、それ以外はビバホームで購入しました。
-奉書紙500枚×8セット
-絵の具
-ハサミ
-カッター
-筆
-刷毛
-パレット
-金属製計量カップ(ロウ用)
-墨汁
奉書紙はペーパーミツヤマ、絵の具は文喜堂、それ以外は100均で購入しました。
-養生テープ
-遮光ネット4000mm*880mm×6枚
-アームバンド3組
-ポリエチレン手袋100枚入
-エプロン3着
養生テープはジョイフルエーケー、それ以外は100均で購入しました。
-クランプ×6個
-電動ドライバー×3個
-ラジオペンチ×1個
-プロトラクター×1個
-ワイヤーカッター×1個
-電動丸鋸×1個
-さしがね×2個
-コンベックス×1個
-水平器×1個
-かなづち×2個
-釘抜き×1個
-ホワイトボード×1個
-木の椅子×5脚
-ほうき×1個
-ちりとり×1個
-扇風機×1個
個人的に借りたものもあれば、大学から借りられたものもあります。
灯雪会主要メンバーが8人で作業人数が足りないので、参加者を募りました。
その方法としては、ツイッターの灯雪会アカウントや、アンケートのホームページを作成して、どれくらいの日数参加できるか、どのようなスキルを持っているかなどを聞きました。
その後、参加できる方をラインのグループに招待し、細かい話を伝えていきました。
-支柱を3日間で完成
-第4週に入るまでに針金ほぼ完成
-残り2週間で紙貼り・色塗りなど
-並行して電飾
となっていましたが、大幅に遅れてしまいました。
「もしこの部分が上手くいかなかったらそれ以降の作業にどう影響するか」など、事前に考えられそうな問題は可能な限り洗い出しておき、余裕を持ってスケジュールを立てておく必要があると感じました。
ここでは日曜~土曜を第○週として扱います。
購入した材料を整理しつつ、まずブルーシートを敷きました。
土台が存在しない行灯なので、すぐに支柱の作業に取り掛かりました。
支柱の本数が北高とは桁違いかつ複雑だったので、苦労したのを覚えています。
また、その日の夜の泊まり込み作業で、人の顔の針金に着手しました。
週のはじめの方で支柱をほぼ完成させ、針金作業に移りました。
支柱がほぼ完成というのは、後付けする箇所があるためです。
龍の胴体、龍の顔、狐の顔、後部の雪の格子の針金を進めました。
引き続き針金作業を行いました。
龍の胴体が進むと視覚的に進んだ感が出るのでその部分を頑張った気がします。
大学関係者の方が応援してくださる、なんてこともあり力になりました。
針金は龍の胴体、龍の顔、狐の顔、狼の顔、後部の雪、人の顔を進めました。
また、週の終わりからレセップの取り付けを始めました。
このあたりから針金以外の作業も並行して行うようになっていきました。
全体的に紙貼り、狐・狼の色塗り、レセップの取り付けも行いました。
針金では刀や人の胴体、手も作りはじめました。
支柱の後付けの部分を接合したりもしました。
この週は比較的制作人数が多かったので、進みが早かったのかなと思います。
針金が7割くらい終わり、紙貼りメインで進めました。
紙貼り・色塗りが間に合いそうにないとかなり焦った記憶があります。
ひたすら紙貼り・色塗りをしました。
何とか間に合わせようと頑張ったのですが、結局間に合わず、「パフォーマンス」と題して当日も作業することに…。
紙を貼りつつ、色塗りやロウ、墨入れをやりました。
展示しながらの作業は斬新で面白かったです。
この日には完成していて、見せられるものになっていました。
出来上がった約1か月の集大成である行灯が光った時の感動は、やはり何にも代えられないものです。嬉しくてずっと行灯を撮っていました。
沢山の方に「すごい!」とか「綺麗!」などと言ってもらえました。ここも頑張って良かったと思える瞬間でした。
いつまでも展示することができないので、自分たちの手で解体しなければなりませんでした。
辛いと思うと同時に、行灯のサイズが大きいので大変でした。
こんにちは、しょうゆ[Twitter:@htd_andon]です。
今回は事前の資料作りがとても重要になりました。理由は以下のとおりです。
特に、組立時に設計者が指揮を取れないというのは致命的な問題で、なんとかして図/文字/数値の3つだけで同等の指示を出す必要がありましたが、文字主体で指示を出すのは非常にリスキーだったため、図や数値の情報を充実させることに努めました。
詳しくは後述の技術公開の3DCGの項目に載せますが、そこで役に立つのが3DCGです。組み立ててほしい順番で木材を出現させるアニメーションを作り、図の部分をクリアしました。
また、支柱の長さや交点の位置などの膨大な計測作業や数値計算は絶対にやりたくなかったので、3DCGソフト内で独自のプログラムを使用することで複数の数値を簡単に正確に算出出来るようにして、数値の部分をクリアしました。
資料を作る上で必要な情報を挙げていきます。
木材の長さ
当たり前ですね。
支柱を組み立てる順番
設計者はそれぞれの木材の果たす役割や意味を理解しているので、その場で順番を考えて組み立てることが出来るかもしれませんが、普通は初見の設計図を見て組み立てる順番をすぐには思いきません。複雑な支柱になれば尚更です。
支柱同士が接する場所を特定出来る情報
目測で支柱を建てる位置を決めるのは論外です。しっかりと数値に基づいた位置に配置しましょう。
木材の角度も、水平や鉛直(垂直)に対する角度なんていう当てにならない数値だけを使うのは避けましょう。絶対にずれます。あくまで目安に留めてください。
ではどのように角度を定義づけるかというと、「支柱同士がどこで接するか」という情報です。私はそれを確定させるために、支柱の両端からの距離、つまりは木材上の1次元座標を使いました。
支柱が支柱としての役割を果たすためには2つ以上の他の木材と固定されているはずです。その場所さえ確定させてしまえば支柱の角度も確定させることが出来ます。
木材の名前付け(任意)
上記の情報を導き出しても、どの木材の情報なのかがわからなければ混乱してしまいます。特に、接点の情報に関してはどの木材との接点なのかが重要です。木材の本数が少ないなら大した問題ではありませんが、本数が多い場合は名前付けしたほうがいいでしょう。
今回の灯雪会の行灯では、支柱全体を4~5個ぐらいの区画に分割して名前をつけました。
例) DrLe01(龍Dragonの左側の方Left)、DrRi05(龍Dragonの右側の方Right)
実際に昨年度使用した資料については、Trelloの灯雪会制作状況のボードの「支柱計画」のリストに置いてあります。興味のある方は見てみると良いかもしれません。
さて、設計時に意識している点について、幾つか挙げていきたいと思います。電飾のことを考えるとかの点に関しては土台支柱説明会とかで聞いて下さい。建築学部とかに在籍しているわけではないので、理論上正しくないこともあるかもしれませんが悪しからず。あくまで経験則です。
構図を意識する
これが難しいのかな、と思います。私の場合は先に3DCGで大体の構図を作ってから支柱を組むので大した問題にはなりませんが、デザイン画だけだとイメージするのが難しいですし、他の人のイメージと異なる可能性があります。難しいです。でも、とても大事です。(私と同じように3DCGで構図を作ってから支柱を作れる環境を提供すべく、現在個人的にWebサービスの開発を進めています。詳細は後述の技術公開の3DCGの最後に記載します。)
切断面を接合面にしない
本職の職人でもない人間が切った切断面は信用できません。角度の有無関係なく、そんな面を使ったら絶対に揺れます。
木材の側面同士を接合するように設計しましょう。
土台に対して垂直に建てるときにも、土台に使っている木材の側面に接合しましょう。これはかなり大事です。これをやるかやらないかで揺れ方がかなり変わってきます。
側面同士だけで接合すると必然的に支柱の占める太さが増していきます。灯雪会行灯では規模が大きく行灯の中の空間が広いので大した問題にはなりませんでしたが、これは仕方がないので、上手いこと考えましょう。
側面同士だけで接合したくても、他の支柱との兼ね合いでそれが出来ない場所が出てくると思います。例えば、間に木材1本分の隙間が出来るとか。そういうときは間に木材を1本挟んで固定すれば解決します。このとき、両方の木材から2箇所ずつコーススレッドを入れるようにしましょう。そのほうが安定します。ただ、同じ場所に打つと先端がぶつかる可能性があるので注意して下さい。
バランスを取る
半分空中に浮いてるような部分を作るときに重要です。シーソーをイメージしてほしいのですが、浮かせたい部分の支柱はその反対側にまで伸びる長めの支柱を配置しましょう。そして、反対側の部分にもある程度の荷重がかかるようにしましょう。多分この方が複数の支柱が一体になって揺れにくく、強度的にも頑丈になります。多分。
最後に、組立時の技術で役に立ちそうなものを幾つか挙げていきます。
土台で使う、2本くっつけて長くするあれはコーススレッド使うと早い
かすがいを使ってたと思うのですが、正直ずれるし面倒くさいです。ボンド塗ってクランクで固定したらとりあえず横からコーススレッド数本打っておきましょう。打ったらクランク外してからかすがいを打てば幸せになれます。早いしずれない。
木材を固定する前に隙間が出来てたら黙ってクランクを使う
隙間ができてる状態で固定すると揺れやすいです。多少手間でもクランクが使える場所なら問答無用でクランクを使って隙間をなくしてからコーススレッドを打ち込む。
高所作業を減らすためには後付も無しではない
今回、灯雪会では支柱ごと後付するという大規模な作業を行いました。高所での針金作業を減らして楽に作業するという目的があったのですが、実際には高所に取り付ける作業は不安定でかなりのエネルギーを使います。確かに高所での針金作業は減ったのですが、大規模な後付計画は危険で計画通りに進めるのは難しいので、本当に後付以外の安全で確実な方法がないかどうかを考えてからにしましょう。
行灯制作において、やり取りは言うまでもないですが不可欠です。
高校時代と異なり、全員が毎日のように行けるわけではなかったので、作業記録をTrelloというツールを用いて残すことで、作業がどこまで進んでいて、次回はどこを進めればいいというのを明確になるようにしました。
支柱の後付けと、その部分の色塗りに苦戦しました。
ただ、先に支柱を付けることができない箇所だったので、高所作業が伴っても仕方ないかなというのが現状です。
ただ、登れる支柱を作ったり、脚立を沢山用意したりするなど、改善の余地はあると思います。
一応完成ということにはなりましたが、展示中も作業をしたり、裏面は紙を貼っていなかったりということで、少し怪しいです。
やはり、参加者が不確定要素なのにも関わらず、灯雪会としての行灯制作初年度ということで、作りたいものを少し入れすぎてしまったことが理由になると思います。
また、個人的な話ですが、高校時代より継続して作業するのが困難に感じられました(老い)。
ここでは、現役北高生が試したことがないであろうことを書いていきます。
こんにちは、しょうゆ[Twitter:@htd_andon]です。
今回の行灯制作では、構図決めと支柱設計で3DCGの技術を使いました。
まず、構図決めで3DCGを用いる利点として、以下のものが挙げられます。
以上の利点は3DCG制作の技術に左右されない利点です。以下に挙げるものは技術に左右されてしまう利点であるため、一概にいい点とは言えません。
続いて、支柱設計の面で3DCGを用いる利点についてです。北高行灯で一般的に使われているSketchUpも3DCGソフトウェアですが、今回はより多機能の(その分扱いが難しい)ソフトウェアであるMayaを使用し、独自に開発したプログラムで効率化/多機能化を行いました。それらの前提ありきでの利点を挙げていきます。
これらの機能のお陰で、設計はもちろんのこと資料作りでもかなりの手間を省くことが出来ました。また、単純作業がかなり減るので、精神的にも穏やかな気持ちを保っていられます。
一方、3DCGの欠点あるいはリスクと呼べるものには以下のものがあります。
幸い、私は当時は3DCGを専攻(現在はWeb専攻)としており、また既述のjoin.meやSketchFabなどのサービスを利用することで、これらの欠点はかなりの度合いで補うことが出来ました。
とはいえ、北高の現役生がこれらの欠点をクリアするのは非常に難しいと考えています。もしクリアできても、それはおそらく特定のメンバーの学業を犠牲にしてようやく得られるものだと思っています。そのため、灯雪会としては2016年度の3DCGの使い方そのままはおすすめし兼ねます。
(現在、これらの欠点をある程度補うことの出来るWebサービスを個人的に開発中です。欠点を補うとともに、構図決めや支柱設計をやりやすくなる機能を取り入れたものにしたいと考えています。来年度にはローンチしたいと考えていますが、力不足で開発が頓挫する可能性は大いにあるのでもしダメだった場合はあしからず。ローンチしたら告知します。サービスの形態がどうなるかは分かりませんが、少なくとも北高生に対しては無料で使えるようにしようとおもっています。)
先ほども載せましたが、材料ネット最安値に詳しく書かれています。
2016年5月30日にTwitterの灯雪会アカウントが作られました。(@tousetsukai)
話し合った内容や、作業の進捗状況を気軽に発信できた点が大きかったと思います。
ツイッターは利用していないが、Facebookは利用している社会人などの北高卒業生の方にも知ってもらいたいという考えのもと、Facebookもはじめました。こちらもツイッターと同時期に作られました。(@andon.tousetsukai)
「灯雪会 Weekly News」と題して、一週間ごとに報告をしていきました。
灯雪会として初めての行灯制作でしたが、上手くいったことも、失敗したことも沢山ありました。3年間ずっと行灯をやってきた人たちが集まったからといって全てが上手くいくわけではないのも行灯の面白い所なのかなと感じました。
また、規模や制作時間は違っても、行灯を制作する・完成させる喜びそのものは変わらなかった気がします。
ただ、北高生として同じクラスの仲間と意見を出し合って、寝る間も惜しみながら一か月間全力で行灯を作って、完成したものを担いで練り歩くことはたった3回しかできません。僕たちがどれだけ戻りたくても戻ることのできない時間です。
北高卒業生として少しでもこの記録がこれからの行灯に役立っていくことを願っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました!